デモクラシー
主人が裁判所に用事があると言うので、サニーが迎えに来た。私も今日は付いて行く。
緑豊かな敷地の中に、レンガ造りの一見優雅に見える3階建ての建物。
ここがチェンナイの地方裁判所と家庭裁判所。驚く事に、外も中も人で溢れ返っている。
特に一階にある家裁は、女の人がいっぱい廊下の椅子に座っている。
「サニー、どうしてこんなに女の人が大勢いるの?」
「ははは、離婚したいのさ」
「はーあ!!何?」
私の偏見だったのかしら!インドの女性が離婚?離婚出来るのか~?
「なぜ、離婚したいの?」
「それは色々だよ!亭主が飲んだくれとか、暴力だとかさ、、、時代が変わって来たからね」
うーん、どこかで聞いたようなセリフだが、どこでも一緒だね。一昔前の日本だって、離婚なんて言ったら白い目で見られたよな~~なんて考えながら。
インドのサティーというヒンドゥー教の慣習(バラモン教、ヒンドゥ―教において、主人が死んだら妻も殉じて死ぬ)がなぜか頭を過ったが、その話は止めておこう。
サニーが付けくわえて一言。
「今の亭主より金持ちに乗り換えようとして、離婚する女性もいるよ」
今より金持ちか~!インドで!?離婚?ほんと、経済が良くなると付随してくる問題?
「そんなに簡単に離婚が出来るの?」
「半年から1年は話し合いで解決しなさい」と家裁は言うらしいが、それでダメな時は裁判になるらしい。ふーん!!
まあーでも賑わっているチェンナイの家庭裁判所。日本の裁判所には行った事が無いのですが、どうなのでしょうか?
主人の用事は家裁では無く、地裁の方です。店子の家賃滞納の件で弁護士と待ち合わせをしていたらしい。
以前からいろいろ問題を起こしてくれる店子で、本当は出て行って欲しいのですが、ここはデモクラシーの国、インドです。デモクラシーの歴史はふるいのです。(古代インドの「リグ・ヴェーダ」の中にすでに書かれていた)そう簡単には物事は運びません。
何事も、裁判です。
今日は裁判官が地裁の法廷で弁護士に、この件について何か質問をするという。何時もはサニーが主人の代理人なので彼が処理をしている訳でたまたま主人がインドに居る時は、もちろん主人も出席する。
とにかく、裁判所の建物の中は暑い。前にも話したがクーラーなどは無く、天上扇風機のみ。教室位の大きさの法廷が幾つもあり、すべてのドアーや窓は開け放されている、だから裁判風景は丸見え。
ひとつの法廷で幾つもの案件が流れ作業のように片づけられる。片付くとは、その事件や案件が終了するのではなく、今日はこれでね、また次回呼びますからと云う意味。
理由はいろいろ、相手が出てこないとか、証人が全員揃わないとかとにかく時間が、かかる。
ちなみに主人の裁判は四年目です。日本も裁判が長いと問題になりましたね。まーインドに限った事ではないのかな?デモクラシーがある国だけですね!!きっと。
インドにとってデモクラシーも良いのですが、国のインフラ事業がなかなか前に進まないという深刻な問題が今生じています。上下水道、電気など生活がより良くなる事なのに
反対する人達がいるのですって。チェンナイは私達が居た時は毎日朝9時から10時まで計画停電でした。その後は毎日3時間の計画停電になったそうです。
政治の話はややこしいので避けたいのですが、1票を持っている人達の生活の格差が一番問題なのでしょう!!貧しい人達の人口は半端で無く多いのです。電気、ガス、上下水道を望んで要る訳では、もし無いとしたら!!インフラが整う事で生じる出費を払いたくないとか?停電が生活に影響しない人達。
そこに、政治家(政治屋)さんが大いに絡んでくるのですって。だって貧しい人達の1票はとても大事でしょう。1票は1票です。
デモクラシーって、大変なのです。
裁判所の話にもどります。
主人の裁判も要約4年目にして目安が付いてきたようで一安心です。
建物の外に出ると、黒いガウンを着た弁護士さんが沢山庭を歩いています。みな紙の束を抱えて、裁判官も黒のガウンを着ています。弁護士との見分け方、裁判官はガウンの中にフリルの付いたシャツを着ています。弁護士は白色の幅広のボウタイを付けています。
気温33度、夏は39度、太陽がぎらぎら照りつけているこの地で、いくらイギリスからの慣習だからとは言え、黒のガウンを着る必要があるのでしょうか?裁判官は別としても?法廷だって天井扇風機なのに、少しは快適さを考えてみたら?いい加減イギリスから離れたら?と、眺めていて思った私です。
写真はさすがに撮る事は出来ませんでした。
ポリスの見回りが厳しいです。
婦人警官が多く目につきました、みな素敵でした。